浣腸(GE)

グループ長 武田利明(岩手県立大学)
メンバー 香春知永(武蔵野大学)
大久保暢子(聖路加国際大学)
吉田みつ子(日本赤十字看護大学)

活動目的

グリセリン浣腸による有害事象が後をたたない状況において、この要因を明らかにするための調査研究や実証研究に取り組むとともに、有害事象を回避するための方策の確立と普及活動を目的とする。

活動計画と報告

  計画 報告
平成28年度
1.学術集会での交流集会の開催
第15回学術集会の交流セッションで得られた疑問や課題など、またH27年度に取りまとめた在宅でのグリセリン浣腸の実施状況の分析結果などに基づき安全なグリセリン浣腸の実施方法などについて話し合う。
2.知識や技術の普及活動
新たに報告されているグリセリン浣腸による有害事象、及び実験動物を活用した基礎研究で得られた知見を『グリセリン浣腸Q&A』に追加し、有害事象を回避するための知識やアセスメントなどについて理解できるように工夫する。
3.実証研究の取り組み
交流集会で得られたグリセリン浣腸に関する疑問や質問事項などについて、実験動物を用いた基礎研究を実施し、得られた結果については『グリセリン浣腸Q&A』に追加する。
1.学術集会での交流集会の開催
第15回の学術集会での交流セッションで、GEと摘便の併用やヒヤリ・ハットに関するWeb調査結果について報告した。結果の概要は、132名から回答がありGEと摘便の併用は90.9%であった。ヒヤリ・ハットでは、①カテーテルへの血液の付着(9.8%)、②GE液を加温しすぎた(9.1%)、③カテーテルの過挿入(3.8%)、④ストッパーの誤挿入(3.0%)、などが明らかとなった。GEと摘便の併用が予想以上に多く、粘膜損傷からのグリセリン液の吸収による有害事象(溶血や血尿)の発生が懸念される。
2.知識や技術の普及活動
新たに報告されている有害事象の特徴やグリセリン浣腸製剤のチューブの柔軟性に関する基礎研究で得られた知見などを追加し、『グリセリン浣腸Q&A』を改定した。
3.実証研究の取り組み
動物実験を用いての実証研究は実施しなかった。
平成27年度
1.学術集会での交流集会の開催
在宅でのグリセリン浣腸の実施状況や有害事象(文献)などについて紹介しより安全な実施方法について理解を深める。
2.知識や技術の普及活動
学会HPに掲載されている『グリセリン浣腸Q&A』の一層の充実
3.実証研究の取り組み
 実験動物を用いた基礎研究を実施することにより臨床での疑問点などを明らかにする。
 
1.学術集会での交流集会の開催
H26年度に取りまとめた在宅でのグリセリン浣腸の実施状況(岩手県内訪問看護ステーションの協力で得られた調査データ)の分析結果と在宅で潤滑剤として使用している石鹸などの刺激性に関する実験研究などについて紹介し、在宅における安全なグリセリン浣腸の実施方法などについて参加者と話し合った。
2.知識や技術の普及活動
新たに報告されているグリセリン浣腸による有害事象、及び実験動物を活用した基礎研究で得られた知見を『グリセリン浣腸Q&A』に追加し、有害事象を回避するための知識やアセスメントなどについて理解できるように記載内容を一部追加修正した。
3.実証研究の取り組み
グリセリン浣腸に関する疑問や質問事項などについて、実験動物を用いた基礎研究を実施し、得られた結果については『グリセリン浣腸Q&A』に追加した。

平成26年度

1. 昨年度実施した在宅でのGE実態調査(岩手県内訪問看護ステーションの看護師)で得られたデータを整理し、技術学会誌に投稿する。
2. 学会HP掲載の『グリセリン浣腸Q&A』をさらに充実させるために、新たに報告されているグリセリン浣腸による有害事象、及び実験動物を活用した基礎研究で得られた知見を追加し、有害事象を回避するための知識やアセスメントなどについてより理解できるように工夫する。
3. 潤滑剤として病院や在宅で使用されている各種石鹸と石鹸・50%グリセリン液の直腸粘膜への刺激性などについて実験動物を用いた基礎研究を実施する。
 
1. 在宅でのGE実態調査については、投稿論文を作成中で投稿は来年度の予定。内容は、技術学会誌に当グループがすでに報告した病院でのGE実施状況(2006,2007)と比較検討し、在宅でのGE実施の現状や課題を明らかにする。
2. 有害事象の発生頻度に関する調査データ(論文報告)について整理するとともに新たに得られた実験データも盛り込んで『グリセリン浣腸Q&A』の記載内容を加筆修正した(HP更新手続き中)。
3. GEの潤滑剤として都内の病院で使用されているシャボネットユ・ム(P-5)やビオレ、ミューズなどを選択し、50%グリセリン液+潤滑剤の直腸粘膜への刺激性について実験動物を用いた基礎研究を実施し、ビオレやミューズなどには一時的な直腸粘膜刺激性があることを示唆する知見が得られた。
平成25年度

1.日本看護技術学会交流集会の企画・運営と研究成果の普及

2.小冊子『グリセリン浣腸Q&A』の内容を学会HPで紹介するとともに、記載内容についての質問や検討課題等についても情報収集を試みる。

3.『グリセリン浣腸Q&A』をさらに充実させるために、一昨年度から新たに報告されているグリセリン浣腸による有害事象、及び実験動物を活用した基礎的な研究で得られた知見を追加し、有害事象を回避するための知識やアセスメントなどについてより理解できるように工夫する。

4.新人看護職の卒後臨床研修内容にグリセリン浣腸が盛り込まれているか等について全国調査を実施する。

1.GEチューブの柔軟性と穿孔との関係

「グリセリン浣腸製剤のチューブの柔軟性に関する基礎研究」として、芝浦工業大学勝川拓也氏、平野嘉大、岩手県立大学米田隆志氏の協力を得て研究し、第1回看護理工学会学術集会にて発表した。その結果、PE製チューブの短い製品は反力が大きく穿孔を生じやすい可能性が高いことが明らかになった。今後は実際に有害事象を発生しているGE容器の特徴と今回の実験結果を照らし合わせると同時に、実際に看護の現場で使用する際に発生する力を計測することが必要となる。

 

2.在宅におけるGEの実態

岩手県内訪問看護ステーションにおいてGE実態に関するアンケート調査を実施。101名から調査用紙を回収し、現在分析中である。

平成24年度 1.日本看護技術学会交流集会の企画・運営と研究成果の普及
2.昨年度の交流集会で紹介した小冊子『グリセリン浣腸Q&A』の内容を学会HPで紹介するとともに、記載内容についての質問や検討課題等についても情報収集を試みる。
3.『グリセリン浣腸Q&A』をさらに充実させるために、これまで報告されているグリセリン浣腸による溶血や血尿、直腸穿孔などの有害事象に関する実態の概要を盛り込み、有害事象を回避するための知識やアセスメントなどについてより理解できるように工夫する。
4.臨床の場では確認できない検討課題については、実験動物を活用した基礎的な研究を積極的に取り入れ、得られたデータを交流集会で紹介する。

グリセリン浣腸による有害事象が後を絶たない状況を重く受け止め、有害事象を回避するための知識や方法についての普及活動を行っている。第6回の学術集会から継続して交流セッションを開催しており、今年度も多くの参加者との情報共有を行った。特に24年度は、グリセリン浣腸と摘便の関係から、解剖学的に安全な摘便の手技について、解剖学の専門家を交えて議論した。

また、昨年度に作成した『グリセリン浣腸Q&A』のデータの更新を行い、HPに掲載した。
平成23年度 1.日本看護技術学会交流集会の企画・運営と研究成果の普及
2.平成23年10月開催の技術学会において「グリセリン浣腸実施ガイドラインの作成に向けて」と題して、交流セッションを企画し、これまでの国内外のグリセリン浣腸による溶血や血尿、直腸穿孔などの有害事象に関する実態調査、有害事象を回避するための知識やアセスメントなどについて整理し、いったい、どのような方法を用いればよいのか、さらにより現実的に“やってはいけないことは何か”を明らかにし、何らかの指針を出すことができないか検討する。
3.これまでの調査研究や実証研究(基礎研究)で得られた内容を盛り込んだ“ミニガイドブック”の作製を試みる。
グリセリン浣腸による有害事象が後を絶たない状況を重く受け止め、有害事象を回避するための知識や方法についての普及活動を行っている。第6回の学術集会から継続して交流セッションを開催しており、今年度も多くの参加者との情報共有を行った。特にグリセリン浣腸の生体への作用(局所と全身)に関する確かなデータが不足しており、実験動物を活用した基礎的研究にも取り組んだ。この研究で得られた知見とこれまでの調査研究で得られた情報をコンパクトに整理し小冊子(ミニガイドブック)『グリセリン浣腸Q&A』にまとめた。この冊子は、技術学会学術集会の交流セッションで配布するとともにHPにも掲載し研究成果を実践現場に還元する。
平成22年度 1.学術集会交流セッションの企画・運営
2.平成22年10月開催の第9回学術集会において「グリセリン浣腸の有害事象について考える」と題して、交流セッションを企画し、安全なグリセリン浣腸の技術を確立・普及していくための情報交換を行う。
3.文献検索による情報の収集とともに、テキスト記載内容のエビデンスの有無に関する実証実験も行う。
平成22年10月開催の技術学会において「グリセリン浣腸の有害事象について考える」と題して、交流集会を企画した。
平成21年度 1.学術集会交流セッションの企画・運営
2.平成21年9月開催の第8回学術集会において「グリセリン浣腸の有害事象について考える」と題して、交流セッションを企画し、安全なグリセリン浣腸の技術を確立・普及していくための情報交換を行う。
3.文献検索の報告を行う。
6月6日に会議を行い、グループ内に臨床看護師に入っていただき、GE実施後の我慢する時間の根拠や効果などについて提案があり、臨床での問題や工夫について検討した。我慢する時間の根拠については確かなデータがないことから実証実験を実施し、GEの作用は即効性で断続的な作用であることを明らかにした。また、メンバーの病院でGE後の有害事象の発生状況に関する前向き調査も実施し、有害事象回避のポイントの1つとして、GE時は肛門部を実際に確認することが抽出できた。これらの内容とある病院でのGEの実施状況に関する実態調査のデータについて8月28日に委員会を開催し検討するとともに、9月26日に開催した第8回学術集会の交流セッションで報告した。交流セッションの内容については、技術学会誌に公表する予定である。