このたび、第8期に引き続き、一般社団法人日本看護技術学会の第9期理事長を拝命致しました。
日本看護技術学会は、看護技術の効果と根拠を示すこと、確かな看護技術の普及を目指し設立された学会です。
看護技術を取り巻く社会的環境は激変しています。COVID―19のパンデミックでは、看護技術の効果の源泉となる可能性が指摘されていた「触れること」が「感染を防止する」ために制限されました。少子高齢化が進み、人手不足が深刻化しています。このような中、それを補うとされて注目を浴びているIT技術は、看護技術の効果の中核を為す「癒し」を患者看護師双方に与え得るものになっているでしょうか。生活の援助は介護福祉士、ヘルパー、看護助手が担うことが増え、あたかもそれがチーム医療として成熟しているととらえられている側面もあります。さらに、看護師の仕事の範疇に侵襲をともなう技術が増え、実はこれらの医療技術の根拠が脆弱な可能性もあります。教育の場をみると、日常的に若者が送っている生活の延長線上に看護職が行う生活の援助技術を置くことがたいへん難しくなり、すべてを「知識や態度」として伝授しなければならなくなっています。
本学会は、これらの様々な課題に対して、会員同士の対話や議論を通して何らかの光明を見いだすことを目指しています。第8期(2022~2024年)では、編集委員会は速やかに会員の研究を皆様に届けるために迅速査読の制度を発足させました。研究活動推進委員会では、コロナ禍で影響を大きく受けた研究助成が今、軌道に乗っています。技術研究成果検討委員会は、技術成果の普及を目指す班活動において、新たな班を承認する仕組みを作り、「食」に関わる班が活動を始められることになりました。さらに、診療報酬化に向けて、在宅での排便管理や、脳血管疾患急性期への背面開放座位の技術について活動を続けています。広報委員会ではこれらの学会の活動を有効に知らせるために活動をしておりました。また、倫理委員会は活動を実質化させました。定款の変更を含めて選挙制度の改正を行い、矛盾がないように整備し、活動の充実のために理事数を増加させました。また、菱沼典子先生を名誉会員としてご推戴することができました。
第9期ではこれらの活動を継続しつつ、「看護技術」の要素として失ってはいけないものは何か、守り続けていかなければならない要素は何か、を学会として探求し、社会に提示していきたいと考えています。それは、看護の対象である国民の皆様の命や生活の質に寄与できるものであると確信しています。皆様のご意見がこの会の推進力になります。どうかご指導、ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
一般社団法人日本看護技術学会第9期理事長 角濱春美