理事会を代表して 小板橋喜久代
23年の年明け以降これまでに、大雪に見舞われた地方と一滴も水分に恵まれなかった地域が大きく二つに分かれていたが、2月の暦が下ってきたところで、雨水の季節を忘れることなく大地に水の滲みとおっていく恵を体験した。大自然のリズムの確かさ、豊かさに改めて感謝したい気持ちであった。会期の変更をしたことにより、新年以降の3ヶ月間は、技術学会事務局の3年間の総まとめの作業となった。学会活動にも大小のリズムがあり、年間の事業計画に沿って季節ごとのイベントを盛り立ててこられたのも、評議員はじめ会員の皆様と、裏方に徹して事務局を引き受けてくださった久保明子さんのおかげと言う以外にありません。このような事務作業は全くの始めてにも関わらず、その都度非常に適切にサポート(重要事項を進言)してくださり、滞りなく活動を推進してくださった久保さんの力には、感謝しつくせないものがあります。会員の皆様の気持ちを込めて、御礼を申したいと思います。
記憶に残るいくつかの事を振り返り、新年度への橋渡しになれば幸いです。
学術集会の成果
この期間に開催された3回の学術集会では、それぞれの地で活躍されている会員の皆様のご協力をいただき、独自性の高い学術討論が行われました。20年度の青森【藤井大会長】から、さらに北へ海を渡って21年度の旭川【故岩元大会長】へ、その後南下して22年度は名古屋【藤本大会長】へと引き継がれてきました。大会当日を迎えるまでの企画実行委員と実行部隊の大変さが、事務局にもひしひしと伝わってきましたが、前日の夕方に開かれる評議委員会では、すっかりと準備が整えられており、全国から駆け付けてくださった役員の皆さんを迎えていただきました。いずれの学会も看護技術を真剣に捉えた斬新な視点からのテーマが掲げられており、本学会の一大テーマ「わざ」への情熱がみなぎっていると感じました。多くの研究成果が発信され、研究推進委員会からの大会賞を顕彰するという工夫も実を結びました。
研究論文の増加と技術検証への期待
なんといっても学術誌が年3巻発行できるようになったことは、大変な成果と思います。会員の皆さんの活動成果そのものの評価です。皆さんが熱心に研究に取り組んでくださったことが形に現れました。このような学術誌が編集されるまでには、影の力として、査読その他の編集作業に関わっていただいた皆様のお力添えと、一人ひとりの看護技術検証に対する学術的価値への熱い思いに支えられていると感じました。今後の課題は、この学会誌も含めて、本学会が学術団体登録されることを期待しています。
多分野にまたがる研究成果検討作業が報告された
「技術研究成果検討委員会」というユニークな委員会を持っているのも、この学会の独自性だと思います。5分野の研究者グループを立ち上げて地道な作業を進めていただきました。技術の質を高めたい、根拠を知りたい、どこまで、何が明らかになっているのかを分かったうえで臨床実践に活用していきたい。どのような研究が報告されているのだろうか、研究成果が適切に臨床活用されることで、研究の価値が高まるといえます。
10周年記念事業を立ち上げて
第10回学術集会の準備を着々と進めていただいておりますが、その中に10周年記念事業を組み込んでいただくことができて良かったです。今期の理事会で特別事業企画を考えようという中に、この10周年記念事業が提案されました。記念誌出版のための準備をしてくださっているなかに、技術学会の創設を振り返り、その足跡を探し、さらなる学会の発展を思い、そのめざすべき方向を見据えてみる。それらのことが集約された素晴らしい記念誌を次回の学会会場で受け取っていただけるはずです。
ひとつのことをクリアすると次の課題が見えてきます。たくさんの課題を抱えながら、新たな課題に対する対処法を模索しながら、看護の場を見つめつつ進んでいくのが、学会の存在意義とも言えます。皆さんと共に学会活動に取り組んできたことで、ますます看護技術への思いが深まったように思います。皆さんの手で蓄積された有形無形の財産をさらに膨らませていくという楽しみを、新理事会にバトンタッチさせていただきます。
2011年3月3日(雛まつりの日に)
会計担当理事 小山敦代
日本看護技術学会理事の任務終了にあたり、ひとことご挨拶を申し上げます。
数字とお金に弱い私が、なんとか3年間の会計担当理事の任務を終えることができ正直ホッとしています。これもひとえに、事務局久保さんの大きな力があってこそでした。
日本看護技術学会会則第23条に、“本会の運営は、会費および本会の事業に伴う収入などによって行う”とありますように、学会運営のカギを握っているのが会計です。
会計年度は、平成21年9月27日、旭川市で開催の第8回総会において、“1月1日に始まり12月末日をもって終わる”から“4月1日に始まり翌年3月末日をもって終わる”と会則改正されました。改正前の会計年度では、総会の時期からみて、予算案の成立や決算時期に不都合がありましたが、それが解消しました。移行期の平成22年度の会計年度は、平成22年1月1日から平成23年3月31日と3カ月延長となりました。
日本看護技術学会の会費は、入会費4,000円、年会費8,000円と看護系学会の中でもそう高くない金額になっています。これも本学会の目的が、“本会は看護技術の検証と開発を追求し、もって看護実践の向上に寄与することを目的とする”とあるように、一人でも多くの看護職が看護実践の向上を目標とにする学会の趣旨にあるかと思っています。また、本会の予算および決算は、評議員会および総会の承認を受け、会誌に掲載しておりますが、今期は何とか値上げをしないで事業が円滑に行われ、目的達成をと常に理事会で審議してまいりました。学会も10周年を迎えます。ますますなる充実・発展を祈ってやみません。 最後に、会員の皆様はいうにおよばず、ともに役員を勤めさせていただきました小板橋理事長はじめ、理事の皆様、事務局の久保さんに心から感謝申し上げます。
編集委員長 佐伯 由香
編集委員を引き継いであっという間の3年間でした。その間、これまで年2回発行していた学会誌を年3回に増やすことができました。これも会員の方からの投稿、そしてお忙しい中査読を引き受けてくださった委員の方々のおかげと思っております。この場を借りて感謝申し上げます。ただ、看護実践が行われている臨床現場からの投稿や声が少なかったことが、少し心残りです。本学会は、看護技術を中心に、研究と教育そして臨床現場を繋ぐ場であると考えております。臨床現場で何が起こっているのか、何がトピックなのか、問題提議だけでも結構ですので、是非気軽に声を送っていただければ、それをきっかけに議論は進むと思います。3者の距離が少しでも縮まり、看護技術の科学的検証、そして質の向上へと繋げることが本学会の役目だと思います。今後、日本看護技術学会がますます発展することを願うばかりです。
学会誌編集担当理事 本庄 恵子
3年間、理事を担当させていただき、ありがとうございました。編集委員長の佐伯理事とご一緒に、主として、日本看護技術学会誌の編集委員会で活動させていただきました。この間、学会誌への投稿論文数が増えてきたことは、大変嬉しいことでした。学会誌には、生理学的・解剖学的な見地から看護技術のエビデンスを提供する研究や、対象となる人々の主観的な心地よさから看護技術を探究する研究など、さまざまな意義深い論文が掲載されていると思います。また、日本看護技術学会では、看護実践家と看護研究者が連携しながら、より良い看護技術を探求しているところが、素晴らしいと思います。この日本看護技術学会の良さを大切にしながら、今後も学会が発展していくことを期待していますし、私自身も学会員として努力していきたいと思います。
研究推進担当理事:渡邉順子・藤井徹也
平成20~22年度の3年間、研究活動推進委員会を担当いたしました。今期の委員会組織は、より多くの会員の意見を委員会活動へ反映するために、研究推進活動委員を東北・北陸・中国・東海地区と拡大して構成しました。各委員が担当事業を適切に分担し、的確な企画・運営を実践したことにより、建設的で活発な委員会活動ができたと思います。特に新たな大会賞の選出基準の策定および運営方法の確立と、若い研究者の育成のために学術集会での学生交流セッション開催など多岐に実践し、多くの成果が得られました。委員会活動にご協力頂いた委員および会員のみなさまに深く感謝いたします。
本学会には「研究推進活動委員会」と「研究成果検討委員会」があり、活動内容の違いが会員に周知されていたかどうかが懸念されます。今後の課題のひとつかと思われます。 今後は、学会活動の成果を会員が共有し、看護・医療・社会へ効果的に還元されることを期待したいと思います。
技術研究成果検討委員長 西田直子
平成20年1月から日本看護技術学会の理事として3年3ヶ月が過ぎようとしています。技術研究成果検討委員長として、本学会や看護界の発展に寄与できた不安があります。 「看護技術に関する現段階までの研究成果を整理し、評価・検討すること」を目的として、看護技術に関する課題のグループを作り活動していくことになりました。武田前委員長をはじめ前回の委員の皆様には継続して、浣腸グループとして活動していただき、新たなグループとして、痛みエビデンスグループ、セルフケア能力評価グループ、移動動作評価グループ、ポジション管理グループの5つのグループで活動してきました。この3年間グループで活動しながら日本看護技術学会学術集会において交流集会を企画し、各グループの課題である技術を確立・普及していくための情報交換や検討を行ってきました。一方、診療報酬に関連した技術を検討するという課題もありながら、少しずつ検討する技術を絞りながら今日に至っています。残された課題は多いですが、次の理事の皆様に引き継ぎながら、看護界の躍進に寄与したいと考えています。会員の皆様のます ますのご健勝をお祈りし、本学会の発展のためご支援をお願いしたいと思います。
副委員長 野月千春
私は、平成20年4月~平成23年3月まで技術成果検討委員会の副委員長として西田委員長と共に、看護技術の診療報酬化につながる研究成果について検討してきました。
技術成果検討委員会には5つのグループがあります。私自身はその一つである「セルフケア能力評価」グループに所属しています。このグループでは患者のセルフケア能力を評価する質問紙「SCAQ:Self-care Agency Questionnaire」を使用した研究活動を行い、セルフケア能力を高める支援の技を明らかにすることに取り組んできました。活動の成果は学術集会の交流会等で発表してきましたが、セルフケア能力を高める支援技術を明らかにするためには、研究的に実践したデータの蓄積が必要です。セルフケア能力を高める支援に関心のある会員の皆様と交流しながら、診療報酬化に向けた活動につなげていこうと思っています。
看護学の進歩には研究成果を活用し研究者、教育者と臨床家が協働することが必要です。今後は理事としての経験をもとに、研究成果を活用し「研究的に看護実践を行う仲間づくり」を呼び掛けていこうと思っています。