班長 | 栗田愛(人間環境大学) 連絡先:a-kurita@uhe.ac.jp |
メンバー |
大久保暢子(聖路加国際大学) 片山恵(葵訪問看護ステーション) 香春知永(武蔵野大学) 北川那美(みんなのかかりつけ訪問看護ステーション藤が丘) 武田利明(前岩手県立大学) 浪切もり子(葵訪問看護ステーション) 道畑恵利(鶴ヶ島訪問看護ステーションピアラボ) 吉井紀子(大阪青山大学) 吉田みつ子(日本赤十字看護大学) |
動画(YouTube)「摘便の技術Ⅰ」
動画(YouTube)「摘便の技術Ⅱ」
グリセリン浣腸による有害事象が後をたたない状況において、この要因を明らかにするための調査研究や実証研究に取り組むとともに、有害事象を回避するための方策の確立と普及活動を目的とする。
グリセリン浣腸には、主に3つの有害事象(考えられる原因)が報告されています。
特に、直腸穿孔・損傷、溶血、腎機能障害などの有害事象は、20年以上報告され、2021年においても有害事象が9件報告されています(図)。GEは、摘便と実施することで有害事象のリスクが高くなるとも指摘されており、GEを安全に実施するための知識・技術・アセスメントが求められます。
※医薬品医療機器総合機構が集約するPMDA副作用データベースで外用薬「グリセリン」で検索した結果より作成(2022年11月更新)
準備中
第11回学術集会(2012年9月17日(月)10:20~11:40)において、45名の参加者を交えて、本セッションを行いました。台風の中ではありましたが、ゲスト講師の大分大学医学部名誉教授島田達生先生を交え、今回は主として摘便に関する手技に関して、解剖学的側面から検討しました。内容は次の通りです。詳しくは本学会誌に掲載予定です。
グラフに示すように、GEを実施したことによって起こった直腸粘膜損傷、直腸穿孔、GE液の血中混入による腎不全などの報告が後を絶ちません。報告論文の中には、自宅で家族がGEを実施したことによる直腸穿孔、GE実施直後に症状があらわれず、1週後に発症した事例がありました。また循環動態への影響によりGE実施直後に心肺停止となった事例なども報告されています。看護師のGE実施手技および、実施にともなうアセスメントが重要であることは言うまでもありません。
摘便は直腸粘膜を損傷するリスクが高いにもかかわらず、GEとの併用が行われ、かつ標準的な手技として確立されているとは言い難い技術です。そこで、大分大学名誉教授で解剖学者の島田達生先生より、解剖組織学の視点からみる粘膜を傷めない摘便手技に関してプレゼンテーションしていただきました。
解剖組織学の視点から推奨される一般的な摘便手技として、患者を左側臥位にし、ゼリーをたっぷりつけた手袋にて、第2指を肛門から患者の背側に向け挿入し、曲げた指の腹に便をひっかけて掻き出すこと。そして、肛門から4cmまでは重層扁平上皮で覆われているために物理的な傷害に強い構造となっているが、その奥からは急に粘膜組織に移行しており傷害には弱い構造となっていることに留意すること。さらに、息むことが出来る患者は便が掻き出しやすくなるため、息んでもらう。息むことが出来ない患者には用手的に腹圧を加えることも便を出しやすくする工夫ではないかと述べられました。
会場の参加者からは、臨床では、挿入は人差し指や中指で、どれだけ長く指を入れることができるかが重要なようであったこと、指を挿入する向きも背中側・腹側、単に掻き出す・ぐるっと回すなど、手技が多岐に渡っている状況が意見交換されました。
また、呼吸器装着の患者に対して、摘便とグリセリン浣腸を併用していたことと、グリセリン浣腸と浣腸の順は様々で(GE施行後摘便、摘便施行後GE,前日にGEしたが出きらないので摘便をするなど)、統一した基準がなかったという意見も出ました。
これらの点を踏まえ、本グループでは引き続き、安全な摘便の技術について検討していく予定です。