日本看護技術学会

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移動動作評価班

班長 西田直子(京都先端科学大学)
連絡先:nishida.naoko@kuas.ac.jp
メンバー 國澤尚子(埼玉県立大学)
若村智子(京都大学)
水戸優子(神奈川県立保健福祉大学)
平田美和(帝京大学)
冨田川智志(日本福祉大学)
首藤英里香(札幌保健医療大学)
小林由実(社会福祉法人 みなと舎 ゆう)

活動目的

患者が安全・安楽に移動動作を行うための患者の行動や看護師の援助方法の工夫について、科学的に分析するた3めの研究・調査を行うことを目的とする。

用具を使って楽に移乗介助を!Q&Aはこちら


第21回学術集会 交流セッション速報

★2023移動動作評価班交流セッション報告

12回学術集会 交流セッション速報

第12回学術集会(2013年9月15日(日)9:30~10:30)において、「看護師にとっての安全安楽な移動動作の援助の改善」をテーマに交流セッションを企画し、45人の方に参加していただきました。移動動作評価グループ主催の交流セッションは6回目です。今回は以下のような報告をしました。

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1.2012年に実施した車椅子移乗動作に関する実態調査の結果報告(水戸優子・鈴木和代)

 本調査は、病院に所属する看護職者による車椅子移乗介助動作のアセスメント、工夫点、困難点などの実態を明らかにし、看護職者による移乗・移動介助ガイドラインを作成する基礎研究とすることを目的に実施した。全国200床以上の病院を系統的標本抽出法により選択し、看護部長に研究協力の承認を得た後、日頃患者の車椅子移乗介助動作に携わる看護師、准看護師、介護福祉士、車椅子移乗介助訓練を受けた看護助手に回答してもらった。

 介助対象患者の44.5%は高齢者であり、47.2%の看護職者は1日5回以上の車椅子移乗介助を実施していた。

 移乗介助時に使っている方法や工夫している点に関する734の自由回答は33項目に分類され、①原則に則った介

助法の実施、介助方法の工夫をする(10項目49%)、②介助の準備、介助に使用する道具を調整し、作業環境を整え、用具を活用する(11項目30%)、③アセスメントを含め患者の状態に合わせた介助を行う(7項目16%)、④スタッフ間および他職種との連携(4項目5%)の4つに整理された。

 移乗介助で困っていることに関する386の自由回答は29項目に分類され、①物理的環境、職場環境に関すること(7項目42%)、②患者の状態や介助時の状況に関すること(11項目40%)、③介助者の状況や技術開発に関すること(8項目16%)、④安全や事故防止に関すること(2項目2%)の4つに整理された。

 2人以上の看護者で行う複数介助は工夫点であると同時に、人手不足による困難点でもあった。複数介助方法の教育や、ボディメカニクスに基づく方法ではうまくいかないときに新たな方法を習得する場がなく、介助補助用具の種類や数が不足している実態が明らかになった。

 

 

2.Webで検索された移乗・移動用具の種類(水戸優子)

 

 2013年5月~6月に検索エンジン「Yahoo! JAPAN」「Google」「楽天」「Excite」にて「移動用具」「移乗用具」で検索したところ、79件の用具が抽出され4つに分類された。1つ目は用具ごと移乗・移動させる介助ベルト、手動のリフト、身体を乗せるリフトなどである。2つ目は用具上で移動・移乗するスライディングボード・シート、ターンテーブルなどである。3つ目は用具(手すり)を把持して移動するバーやつり革などである。4つ目は立ち上がり姿勢を支える座位保持ベルト(膝を固定)、立ち上がりの動きに合わせて座面が傾斜する椅子などである。今後これらの道具の適用や使用方法、効果の検証に取り組む必要がある。 ido_2

 

3.職場における腰痛予防対策指針の改訂と腰痛予防への対処(西田直子)

 2011年に4日以上の休業を要する腰痛は4,822件であり、業務上疾病の6割を占めている。保健衛生業の発生は他の業種に逆行して年々増加しており、このうち社会福祉施設等での発生が最も多い。日本の労働安全衛生対策は海外に比べると遅れており、1994年に厚生労働省から公表された「職場における腰痛予防対策指針」は、このような現状と現在の労働現場に合ったものにするため、2013年6月に改訂された。これによると、腰痛の発生要因は動作要因、環境要因、個人的要因に、仕事への満足感が得にくい、上司や同僚からの支援不足、過度な長時間労働などの心理・社会的要因が加わった4つとされた。

 しかし、重量制限について十分に議論できていないことや労働安全衛生マネジメントシステムを福祉・医療分野で活用する方策が明確でないこと、福祉用具の開発・普及、健診の見直しなどの課題が残されている。

 交流セッション参加者のうち、この新改訂を知っている人は6、7人にとどまり、周知徹底が必要であることが確認された。

 

 移動動作評価グループでは今回の結果を含めこれまでの検討成果を現場のかたに活用してもらえるよう、今後は看護職者による移乗・移動介助ガイドライン作成を進めていきます。

 

<これまでの交流セッションでの報告>

第7回学術集会「動作のエビデンス」(2008年)

第8回学術集会「安全な移動動作の現状と困難」(2009年)

第9回学術集会「看護師の移動動作の援助の現状と困難(第3報)(2010年)

第10回学術集会「看護師の移動動作の援助の実際と工夫」(2011年)

第11回学術集会「安全安楽な移動動作の援助の実際と工夫」(2012年)